中津野お田植え踊り

 毎年4月最終日曜日に、金峰町中津野の南方神社へ奉納される棒踊り系芸能です。踊りは4種類(金山踊り・四人がらみ鎌踊り・六人がらみ鎌踊り・棒踊り)あります。
 保存会の方によれば、かつては普通作の田植え上がりの踊りとして、半夏生のころに行われ、「ハゼオドイ(半夏生踊り)」と呼ばれていたそうです。戦後、早期米が中心になり、その田植えが落ち着き、皆が集まりやすい4月最終日曜日に開催するようになったそうです。
 由来ははっきりしませんが、金山踊りは金峰町田布施の大野から、棒踊り・鎌踊りは、伊佐のほうから伝わったともいわれます。何度か中断があり、現在のものは平成16年に復活しています。
中津野南方神社(上諏訪・下諏訪の鳥居)
神社に到着した踊り子
 午前11時に踊り子が道行きの歌に合わせて境内に到着。朱色の襷をほどいて、それぞれの採り物(棒・鎌・ナギナタ・刀・ジャリン)とともに拝殿にお供え。神官によるお祓いを受けます。神事の間に、集落の人々が境内で昼食。
 終わると正午から境内の、下の段と上の段で、それぞれ「金山踊り」「鎌踊り(2種類)」「棒踊り」の順に踊ります。
 踊りが終わると、道行の歌に合わせ集落に繰りだし、集落内11か所で披露して回ります。
襷や六尺棒・鎌なども、お祓いをうける
直会のあと、襷を掛け直して、踊り奉納へ
○ホコ
踊り子隊の先頭に付き、「ホコ」と呼ぶ。280センチのマダケ製で、上部に文字を書いた杉板を付けている。表「奉納 御田植踊」裏面「中津野集落」。中津野ではホコで地面を突くようなことはしない。削り掛けやシベ飾りは、もともとなかった。
ホコ(削り掛けは付かない)
①金山踊り(カナヤマオドリ)
今年は小学生の踊り子16人。踊りの隊形は、2列縦隊。衣装は白絣の着物、朱色の襷がけ。白鉢巻き。採り物は、左手にカンナ(杉板に金の色紙を巻き付けた模造刀。長さ95センチ)と、右手にジャリン(短い錫杖にシベ飾りを付けたもの。長さ36センチ。ふるとチャリンチャリンと鳴る)を持つ。
〔歌詞〕
(ジャリン鳴らし)「清めの雨は、パラリと振り通る」(ジャリンの上下させて鳴らす踊り)
(金山踊り)「おせろが山が」→金山踊りの歌「今度…」
金山踊り
②四人がらみ鎌踊り(地元では「二人組カマオドリ」と呼ばれる)
元は中津野西地区の踊り子が踊った。踊りの隊形は、2列縦隊で、4人一組になって踊る。今年の踊り子は4人×2組=8人であった。衣装は白絣の着物に、朱色の襷がけ、鉢巻。右側にナギナタ役、左側に鎌役が立つ。長刀110センチ。鎌47センチ。
〔歌詞〕
「清めの雨は、パラリと振り通る」(棒突き・踊りとも同じ曲で1回ずつ踊る)
二人組カマオドリ
③六人がらみ鎌踊り(地元では「三人組カマオドリ」と呼ばれる)
元は中津野東地区の踊り子が踊った。踊りの隊形は、三列縦隊で、6人一組になって踊る。
今年の踊り子は6人×2組=12人であった。衣装は黒絣(現在は白絣も入る)の着物に朱色の襷がけ、鉢巻。左右にナギナタ役、中央に鎌役が立つ。ナギナタ110センチ、鎌47センチ。
〔歌詞〕
「とっしゃごの花は、揉めば手に染む」(棒突き・踊りとも同じ曲で1回ずつ踊る)
四人組カマオドリ
④棒踊り
三列縦隊で、6人一組(6人がらみ)。今年は6人×2組=12人(②との掛け持ちあり)。全員、カタギで作った六尺棒を1本持ち、歌に合わせて勇壮に掛け合わせる。白衣又は白絣に朱色の襷がけ、鉢巻姿。棒はで134センチ。
〔歌詞〕
「清めの雨は、パラリと振り通る」(棒突き・踊りとも同じ曲で1回ずつ踊る)
棒踊り
 練習はかつては茶摘みの時期と重なり、集まるのも大変で、茶摘み作業の合間をぬって、先輩の厳しい指導のもと行っていたとのこと。
 今年は4月9日から週3回練習してきたそうです。今は青年も子供も少なくなり、参加してもらえるだけでもありがたいといいます。
 田布施地区の踊りは、7集落が一堂に会して競演します。
 一方、中津野の踊りは、地域の人々や先輩たちが温かく見守る中、晴れ晴れとして踊りを見せていました。
 襷や採り物を神社でお祓いを受け、直会、郷土芸能奉納という流れが、古い田植え上がりの村祭りの様子をよく伝えている伝統行事だと思いました。
●調査日:2014年4月27日(日曜日)午前11時から神事、正午から奉納
●調査地:鹿児島県南さつま市金峰町中津野 南方神社