上之坊「十五夜お月様作り」ビデオ公開

二才(青年)が,十五夜の小綱をつなぎ合わせて輪を作り,お月様を描きます。

●動画:南さつま市坊津町の十五夜お月様作り

【十五夜綱引き】公民館前の坂道
1.役員による口説き歌
2.二才組の子供組への走り込み(飛び込み)
3.二才組対子供組の綱引き
4.子供組の綱切り・綱隠し
5.二才組の綱探し・綱つなげ。
(1~5を3回繰り返し)

【十五夜お月様作り】公民館の前庭
1.二才が公民館に行列を組んで入場
2.手をつなぎ回転する。
3.途中で役員から小綱が渡される。
4.輪にする。
(1~4を7回繰り返し)

上之坊の十五夜綱引きでは,二才組と,集落民を含めた子供組みとが,坂道の上下に分かれて引き合います。まず役員による口説き唄が歌い上げられます。その歌い終わりを合図に,坂の下側にいる二才が,子供組のいる坂の上部に飛び込むしぐさをします。綱引きの後,綱は子供組側の端で切られ,それを子供組が隠します。二才衆はその綱を探し出し,つなぎ合わせて再び引きあいます。一連の動作を三度繰り返します。その後,公民館の前庭でお月様作りです。十五夜綱の材料となったロープ状の細く短い綱(コマイケ - 小さく巻いたもの)をつなぎ合わせて輪を描きます。「ヨイヨイヨイヤナ,ハーレヤナッ,ハーレヤナッ,ヤットコセー」の掛け声のもと,二才が手をつないで回転し,輪を作っていきます。これも数回繰り返してようやくお月様が出来上がりました。

私は古風な綱引きの中に,何か新鮮なものを感じました。二才の首ににネクタイ風の手ぬぐいが巻かれている点,被り物のシベ笠など,異人を思わせるものでした。知覧のオランダ踊りではありませんが,海に開けた坊津で,異国人との接点を,このように表現したのではないかという考えはできないでしょうか。
また,八朔行事が盛んなこと,十五夜口説き歌の伝承など,三島村や屋久島文化との交流も,今後は視点に入れて坊津の伝統文化を考え直す必要があるとも思いました。
上之坊で調査中,隣の集落からも口説きの歌声が聞えました。上之坊・鳥越・泊といった個性豊かな十五夜行事とともに,今後は一つ一つの集落を丁寧に調べていきたいと思います。