出水麓と加世田麓

伝統的建造物群保存地区は、市町村が条例の中で定める、いわゆる町並み保存地区です。それを国が選定すると「重要伝統的建造物群保存地区」となります。鹿児島県内では、出水・知覧・入来の3か所。いずれもに武家地の町並みで、旧薩摩藩の外城制度で形成された武家屋敷群です。外城113か所の中でも出水は大郷とされ、中世山城のそばに、江戸時代になって区画整理された美しい町並みが作られました。

出水麓歴史館写真

一昨年、オープンしたばかりのガイダンス施設「出水麓歴史館」を訪ねました。中に入るとナンコ教室開催中。地元の皆さんの手ほどきで、親子連れがほのぼのと、昔遊びを楽しんでいました。入館記念缶バッジ(公開武家屋敷との共通パスポート)は、持っていると年内何回でも観覧できる、ありがたいお土産です。私は遠方で結局一回しか行けませんでしたが、リピート探訪者には、うれしい特典ですね。さて、その公開武家屋敷の一つ「税所邸」は、加世田から移った上級郷士のお屋敷です。

加世田は戦国時代、出水を本拠にした薩州島津家が治めた地。後に島津忠良(日新公)が加世田別府城を落とし、その城をとり囲むように、武家屋敷群が形成されていきました。お城の麓、本当の意味の「麓集落」です。1768年には麓を南北に貫く益山用水が街道沿いに作られます。「用水路に掛かる石橋を渡って武家門をくぐる」加世田麓ならではの景観が、250年間変わりません。

出水や知覧の整然とした近世都市計画地とは一味違う「生きている町並み博物館」を、加世田麓では見ることができます。

(2019.3.7記 / 『鹿児島民具第31号 - 出水特集号』コラム記事)