この太鼓踊りの特徴はなんですかと尋ねると、「他のところと一緒だよ」とよく言われます。けれども、太鼓踊りには威勢の良い踊り・厳かな踊りの2種類があるように思います。
今年の調査で注目していたのは大太鼓の桴(バチ)。
日置市から順番に示すとこんな感じです。
旧日置郡(日置市・南さつま市金峰町)では、ムベ(方言名うんべ)の木で作ったスティック状の桴です。太鼓を叩く音は大きく響き渡ります。
南九州市川辺町と南さつま市加世田益山では、藁で作った桴です。木製よりすこしソフトな音色です。
南さつま市大浦町と加世田の益山以外(津貫・内山田・小湊)では、藺草で作った桴です。もっともおとなしい音色で、太鼓を叩くというよりも、大太鼓を持った踊り子が踊るという感じです。
最後に今日拝見した枕崎市の太鼓踊りでは、タラの木の枝で作った桴を用いていました。これも日置地区と同様に、大きな音が出せます。
以上のように、太鼓の音を出しやすいほうから、木製(日置・枕崎)>藁製(川辺)>藺草製(加世田・大浦)と違いがあります。藺草を利用するのは、三島村の太鼓踊りも同様のようです。
さあこの変容をどのように解くか。虫追い形の激しい踊りと、祖霊供養の念仏踊り――ということは小野重朗先生なども述べられていますが、上演日・踊り子の構成・歌詞・踊りと、簡単には解釈できません。時間をかけて考えていきたいと思います。