坊津鳥越の十五夜行事

鳥越の十五夜テツナッゴ
十五夜綱引きに使う茅を束ねた「ヨメジョ」を下ろす習俗(テツナッゴ・ドントセ)が見られます。
●調査地:鹿児島県南さつま市坊津町坊 鳥越集落
●調査日:2008年9月13日(旧暦八月十五日前日)
→写真帖:坊津鳥越十五夜行事

〔2008年鳥越十五夜ドキュメント〕
鳥越では十五夜前日の朝、「ヨメジョ」という十五夜綱の材料となる茅と束ねたものを作ります。上之坊の「番茅」と同じようなもので、ヨメジョには季節の花や、ススキなどが美しく添えられます。ヨメジョは鹿児島弁でお嫁さんのことです。まさしく嫁入りする花嫁さんのような姿の茅の束が作られるわけです。

夕方6時30分に、火とぼしが始まります。このヨメジョを集落に下ろす合図として、松明を灯します。7時ぐらいに、この松明の明かりを先導に、ヨメジョ2体が、谷川橋上側の三叉路に下りてきました。ヨメジョは今は3体ですが、以前はもっとたくさん作られていたとのことです。

この三叉路で、テツナッゴという習俗があります。路上で青年たちが手をつなぎ、口説きを歌います。手を左右に引き合います。私は、これは綱引の予行のようにも見えました。歌は「お久米口説き」。テツナッゴは手をつなごうという言葉がなまったものです。
テツナッゴの途中で最後のヨメジョが降りてきました。ヨメジョはテツナッゴの前を通り過ぎ、谷川橋右岸に据え置かれます。

テツナッゴが終わると、二才たちは一旦公民館に戻ります。

再び口説き歌を威勢よく歌いながら、三列縦隊で坊泊小学校正門前まで行進します。見物の人たちも後ろからついていきます。また、正門前の石段で待っている集落の方々もたくさんいらっしゃいました。

小学校正門前ではドントセという習俗があります。ドントセは「どんと押せ」がなまったものです。これま「おしくらまんじゅう」です。掛け声は、上之坊で青年たちが子供たちを追いかける場面の歌と同じです。

ドントセもテツナッゴと同じく、茅下ろしに付随した習俗です。
つまり、①茅下ろし→②綱ない→③綱引き→④相撲の基本要素のうち、①の部分のバリエーションとして、上之坊の火灯しや平原の茅被り・茅かる(茅背負い)、それに鳥越の火とぼし・テツナッゴ・ドントセが位置づけられます。