坊津上之坊の十五夜火とぼし

山の上で松明を灯して回し,集落に「十五夜行事で使う茅を下ろす」という合図をする習俗。

南さつま市坊津町上之坊のヒトボシ(火灯し)を,約15年ぶりに拝見しました。当時「坊トンネル」は開通しておらず,見学には下からずっと上がっていった記憶があります。現在は国道から数百メートルなので,デブデブ症候群の私でも,何とか夜道を登ることができました。カメラマンさんがいっぱい。研究者は私たちだけのようでした。

●写真帖:南さつま市坊津町上之坊集落の十五夜火とぼし

「ジュウシがアマかで塩掛けろ(14歳の子供頭があまいので塩を掛けろ)」の掛け声で,青年が松明をぐるぐる回します。大切な茅のほうは,最近は,予め大人が軽トラで山から公民館近くまで運んでいます。番茅といい,1番から7番まで束ねてありました。奇数がよいといいますが,昔は青年・子供も多く,15番ぐらいまであったそうです。

15年前は空が澄んでいたせいでしょう,火とぼしの場所から浜のほうを振り返ると,人家の灯火が厳かに輝いていた思い出があります。何年かかるか分かりませんが,一つ一つの行事を体感して考えていきたいと思いました。

今日は昼から,輝津館(十五夜の講演会)・久志今村の十五夜綱ねり(綱綯い)・平原(茅被りの場所を再確認)・鳥越の十五夜ヨメジョ(茅の束)を見てまわりました。史談会の先生がおっしゃっていたように,坊津の十五夜行事は茅や藁を集めてくる段階から丁寧に守り伝えられており,実に多彩な文化遺産といえます。一つずつの集落を文化財指定するにはどの集落もあまりにも個性豊かであったので,坊津町域全体を国の重要無形民俗文化財として指定していただいたとのことでした。
●日時:2006年9月30日午後7時から
●場所:南さつま市坊津町坊 上之坊付近