大浦太鼓踊り

南さつま市大浦町の5集落に伝わる,お盆に踊る太鼓踊り。太鼓は穏やかに,踊りを優雅に見せる。

写真帖:2006大浦太鼓踊り

南さつま市大浦町では,毎年お盆の8月15日に太鼓踊りがあります。今年は5つの集落が参加しました。
踊り順は①平原・②永田・③上之門・④大木場・⑤福元。この踊りの順番は,前日14日に日新祠堂でクジビキをして決めます。
この順番で午前7時から3箇所で踊ります。①日新祠堂(じっしんしどう)・②西福寺,最後に③各集落に戻って踊ります。

このうち福元集落では,踊り子の不足で今年が最後の太鼓踊りになりました(昨年は有木・柴内を合わせて7集落の踊りがありました)。

ヒラ(大太鼓)14人・ナカウチ(小太鼓・鉦)4人・ウタ3人が優雅に踊りました。衣装は落ち着いた感じで,ナカウチの花笠も昔から手作りしたものだといいます。
この大浦太鼓踊りを見て感じたことは,太鼓の音が聞えないということです。バチをくるくる頭の上で回したり,太鼓をすったりと,ほとんど太鼓は叩きません。実に優雅に踊りを見せるわけです。

また,大浦太鼓踊りの特徴の一つとして,日新祠堂で最初に踊るということがあげられます。島津忠良(日新公)を祀った聖廟です。踊り子の方も,「日新祠堂で踊るのが最も大切だ」とおっしゃっていました。

さらに,下野敏見先生の『南九州の民俗芸能』によれば,この時期の太鼓踊りは,田んぼの害虫を祓う「虫送り」の意味も含まれているとありました。

踊り子が少なくなり,いままでどおり行事を伝承には大変な苦労があるのだと思います。しかし,素朴でも,地域にとって大切な伝統行事を,ぜひ伝えていただきたいものだと,私は思いました。