枕崎の思い出

1991年7月に撮影した枕崎駅です。
暑い1日でした。
この日は騎射場から,バスを乗り継ぎ,初めて坊津へ行った日です。坊津町歴史民俗資料館は,クーラーも効かず,薄暗い展示室に涅槃図がひっそりと掲げられていました。
資料館前のバス停で一人の旅人と出会います。できたばかりの枕崎空港に転勤になられた年配の方でした。秋目まで行かれるという。目的は私も同じです。運転手さんに「秋目まで行けますか」とその方が尋ねます。「これは今岳まで。そこから歩いて・・・」。
旅は道連れ。6キロの美しい海岸線を二人で歩きます。「昔の人はどこに行くにも歩いていった。人は時速4キロ,自転車は8キロ,車はこの道だと40キロ,飛行機なら・・・。」エンジニアの方だったと思います。機械の話,軍隊用語の話,いろいろなお話を伺いながらの道のりは,あっという間のように感じられました。
秋目は感動でした。ああここに唐招提寺の鑑真さんが上陸したんだ。そう,歴史の教科書に出てくる鑑真です。鑑真上陸記念碑の前で写真を撮りあい,帰りのバスに乗り遅れないよう,早足で今岳まで戻りました。
バスは,カライモ畑の中を通って,鰹節をいぶす香りが漂う,枕崎駅へ着きました。
その方からお別れに,一つの水筒を頂きました。「何も無いけれども,使ってね。勉強がんばって。」その水筒は,今でもフィールドワークに欠かせない,私の大切な宝物です。